大阪大学21世紀COEプログラム 感染症学・免疫学融合プログラム
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リーダー挨拶

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大阪大学
RIMD 微生物研究所

本来、感染症学と免疫学は、100年くらいまえには同一の学問であったものから互いに分離して発達し、今日にいたっております。感染症も、病原体の種類のちがいから、細菌学、ウイルス学、寄生虫学へと細分化され、それらのあいだの相互の繋がりもきわめて希薄になっております。免疫学も、本来の病原体に対する宿主の応答の研究という根本的な考えが忘れられて最近まで、免疫システムそのものの研究がなされてきました。しかしながら、それぞれの分野の研究の進展にもかかわらず、感染症は依然世界的には死因の第一位です。さらに、結核菌をはじめとして薬剤耐性菌の出現、新興・再興感染症の脅威(エイズ・エボラ・SARS等)、感染症のグローバル化、バイオテロの脅威などのあらたな問題がおこってきております。免疫学も免疫システムの複雑なメカニズムはあきらかになってきておりますが、医療の進歩にともなう易感染性宿主の増大、アレルギー患者の急増の問題がおこり、自己免疫疾患の治療法、癌免疫療法もいまだ決定的なものがありません。最近になって、これらの問題を克服するためには、ふたたび、感染症学と免疫学がかつてのように一体化する必要があるのではないかと考えられるようになってきました。感染症が病原体側だけを見てきた事、一方免疫学が宿主側だけを見てきた事に対する反省があらわれてきております。感染症疾患の克服には病原体側だけでなく宿主側の応答をしらなくてはならないこと、また免疫疾患の克服には宿主応答のみの研究だけでは不十分で、自然免疫系の重要性などの研究を通じて病原体の個々の特色をしらなくては解決しないのではないかと考えられるようになってきております。
本拠点の母体である大阪大学医学部、微生物学研究所は、これまで免疫・感染症の分野で国際的にも卓越した業績を挙げてきました。感染症学の分野では、藤野恒三郎による腸炎ビブリオの発見、岡田善雄による細胞融合の発見、豊島久真男によるウイルス発ガン遺伝子の同定、奥野良臣、天野恒久、高橋理明による各種ワクチン開発は代表的なものであります。また、免疫学の分野では、山村雄一が、BCG-CWSを用いた癌免疫療法の臨床治験をおこなうとともに、日本免疫学会の創始者となり、本邦の免疫学の発展に多大な貢献をなしました。その門下生は我国免疫学の中心的な存在となり、そのなかから、岸本忠三はIL-6の発見を通じて、サイトカイン研究の国際的第一人者となっています。また、研究面で卓越しているだけでなく、70年まえに、すでに基礎研究の応用を考え、財団法人阪大微生物病研究会を設立し、他種類のワクチン製造を行い国内外に供給し、感染症の予防に大いに貢献してきました。このような伝統のもと、本拠点は大阪大学大学院医学研究科に属する13研究室からなる感染症学と免疫学の研究グループがともに病原体と宿主の相互作用の解析をめざします。免疫学側からは、特に自然免疫系による病原体認識機構、自然免疫系の活性化から獲得免疫系誘導にいたる分子機構を研究し、感染症学側からは宿主への感染や病原体が免疫応答を回避し排除されない分子機構を研究し、それらの研究から感染症・免疫疾患の克服にむけた新たなストラテジーを開発いたします。また、本拠点は国内だけでなく国際的拠点としての活躍を目指し、積極的にすぐれた外国の研究室との研究交流や開発途上国からの研究者の受け入れ・研究指導を行っていきたいと考えます。
このような研究拠点の形成のため、感染症学・免疫学融合研究に参加する特任教員とポスドクの採用を考えております。これらの研究者には感染症と免疫学の境界領域の研究に参加していただきます。この際、ポスドクは、出身研究室が従来のものと異なる場合を最優先いたします。
教育実施計画では、感染免疫学融合教育プログラム、感染免疫研究教育プログラム、国際研究教育協力プログラムの3つのプログラムを計画いたします。具体的には、感染免疫学術教育プログラムとして、大学院生や若手研究者を対象とした、国際的に優れた業績をもつ国内研究者、外国人研究者による大学院講義セミナーの新設をおこないます。これは、感染症、免疫学の分野において国際的な評価をうけている研究者を招待し、大学院生、若手研究者に最新の感染症学と免疫学の両方の知識を提供します。感染免疫研究教育プログラムとして、若手研究者や大学院生を積極的に国際的に優れた海外の研究室に短期派遣したり、逆に、それらの研究室から若手研究者をうけいれることにより、研究のレベルアップを図るとともに、国際的視野をもった研究者の養成をおこないます。国際研究教育協力プログラムでは、感染症が大きな問題となっている開発途上国からの優秀な人材をうけいれ、研究指導をおこない、国際社会での感染症研究拠点としての地位を高めたいと思っております。このように、本拠点では、これからの感染症研究の中心的担い手となる、感染症と免疫学両方の知識を身につけ、両方の手法をもちいて研究できる若手研究者の育成を中心目的といたします。今後とも大阪大学は、この21世紀COEプログラムを通じて、感染症・免疫学分野で我国の中心拠点であり続けたいと願っております。

拠点リーダー  審良 静男


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